2012年5月31日木曜日

Jessie WareとAlunaGeorge

UKの二人の歌姫が面白いことになっている。

一人目は27歳のディーヴァ肌を持ち合わせたロンドンの女性シンガーJessie Ware。言葉のひとつひとつに魂を吹きこむような、ソウルフルな歌声と、リスナーを一瞬にして魅了してしまう「エロさ」が特徴。なんとSBTRKT, Sampha, JokerなどUKビートミュージックのニュー・ジェネレーションを代表するお三方とのコラボ経験あり。

Julio Bashmoreが手がけた新曲"110%"は、決して「やり過ぎ」ない最高にバランスがとれたトラック。ビートは静けさを保ち続け、Jesseの歌声も決して急に荒ぶったりせず、全編クールなテンションをキープしている。

それがまたエロい。加えて、"Feel free to touch me."とか言うんですよ(あえて訳しません)。

110%






次に紹介するのはMySpaceを介して出会ったという男女デュオAlunaGeorge.
90年代後半のR&Bを感じさせる楽曲に、Brainfeeder直系のスペーシーで先鋭的なビートが絡む。Alunaの歌声はアニメチックで、どこかCorinne Bailey Raeを感じさせるところも。

イギリスの人気テレビドラマ"SKINS”に楽曲が使われたり、BBCで『You Know You Like It』がBBCでパワープレイされたりと、評判はうなぎ登りのようで...
また、彼らのオフィシャルサイトではLana Del ReyのBorn To Dieのリミックスを含む三曲がフリーダウンロードできます。

You Know You Like It




Amy Winehouse不在の中、UKの女性シンガーたちは新たなソウルを求めて歩き出しているようです。


Daughn Gibson




京都のオルタナ・フォークバンド、Turntable Filmsを最近良く聴いている。
彼らはWilcoやNeko Caseのように、アメリカのトラディショナルロックを独自の方法で解釈した音楽を奏でている。多分本人達は好きな音楽をただやっているだけだと思うけど。

それで最近アメリカのオルタナ・フォーク/カントリーに耳が敏感になっていて、Sandro Perri、近年のJulian LynchやSharon Van Ettenを好んで聴いていました。何か刺激的な新しいアクトはいないかなーとPitchforkや、個人サイトをブラブラ詮索していた時に見つけたのがこの男Daughn Gibson(読み方はドォーン・ギブソン?)。


Tiffany Lou


Pitchforkによると、彼はペンシルヴェニア出身の31歳。以前はPearls and Brassというストーナー・メタルバンドでドラムを叩いていたようです。トラックの運ちゃんとして10年以上働くなか、ラジオから流れるカントリーミュージックに惹かれ始める。
「歌詞の物語が好きになっていったんだ。どれだけばからしく聞こえるやつでもさ。その物語が人々の姿や、シナリオ、そしてシナリオであることに惹かれたんだ」

In the Beginning


先日White Denimから発売したデビュー・アルバム『All Hell』で展開されるのは、何年も置き去りにされたような黄ばんだ電子音に、アコースティックギターやピアノの生音が融合した、Sandro Perriにも通ずるようなオルタナ・カントリー。でもDaughn Gibsonはとことん湿っぽいんですよ。しかもバリトンボイスで甘く囁くように歌う、クルーナー(crooner)ときた。

White Denimのオフィシャルページでは"In The Beginning"のフリーダウンロードも実施中。是非一度聴いてみては? 
White Denim


2012年5月22日火曜日

Late Of Pablo



以前Private DubでMontage Populaireというイギリスはサウスハンプトンの自称ローファイ・ポップ・バンドをインタビューした。 彼らのサウンドは、フューチャリスティック・サイケデリック・ディスコティックの三拍子揃った、良質なポップソングを奏でていた。おもちゃのキーボードをペダルに通したり、身の回りにある音を何でもかんでもサンプリングしてるのは面白かったし(別に真新しいことではないけれど)、フリーで公開されたEP一枚でキャラはしっかり確率されていた。

今回紹介するのは、Montage Populaireの元メンバーWilly Sullyのサイド・プロジェクト「Late Of Pablo」。彼らは自身の音楽を「Nu Retro(ニューレトロ)」と呼んでいる。確かに、どこかで聞き覚えのあるメロディーがちらほら。ホコリを被ったようなレトロなギターとキーボードの音色に、決して荒ぶることのない優しい歌声。決して複雑さを追求しないストレートでシンプルな曲構成と、時々顔を出す実験性。レコードのチリノイズからスタートする"If Trumpets Were Swords"の音割れしたドラムビーツに、フィルターでレトロ感を増幅させたキャッチーなピアノとトランペットのリフ。なんだろうこの幸福感は!(こちらのリンクでフリーダウンロード公開されてます→http://www.strummerville.com/late-of-pablo/

とにかく下記プレイヤーで一度聴いてみて!

 
Montage PopulaireのNothing Serious EPはこちら


2012年5月10日木曜日

LLLL


TL上に突如現れた新バンドLLLL。

読み方は不明(フォーエルかな)、メンバー構成も不明。唯一わかっているのは、彼らは東京から出てきたということと、バンド名候補にJealousy Lopez、Don Zokoがあったが全てボツになったということ。なんだか東京インディー界隈ではジブリウェイブと呼ばれちゃってるみたいです。

リヴァーブで包み込まれた、掴みどころのない音像。その上を絹のように柔らかで口足らずな女性ボーカルが滑りこむ。彼らが紡ぎだす風景はソフィア・コッポラが「Lost In Translation」で描いたような、変に綺羅びやかでポップで、しかしどこか空虚感がある東京の夜だ。特に4曲目の『Assume』で聴かせる高揚は(Kiss Kiss Kiss!)他のチルウェイブアクトに類を見ないトリップ感を覚えさせてくれる。

値段設定も憎いことに"Name Your Price"なので、一度聞いてみてその真価を確かめてほしい。

Web: http://lllltokyo.bandcamp.com
Twitter: @LLLLTOKYO

2012年5月6日日曜日

Interview: Kevin Shields

(photo by Steve Double)

 

Interview

by Ryan Dombal
April 30, 2012
(source: Pitchfork)

Pitchfork: このリイシューの制作には長年かかりましたね。なぜリリースまでにそんなに時間がかかったのですか。

Kevin:作業は実は2001年の段階で、Sonyと合意を得ることができてから始まっていたんだ。彼らがCreation Recordsからの権利を引き継いでいたからね。Sonyとした約束の一つに「すべてのEPを一つのパッケージに集約したい」というのがあった。なぜかというと2001年の時点ではアルバムのリリースは簡単にできたけどEPまでは難しかった。だからその時はすべてのEPのコンピレーション(のリイシュー)、それだけだった。

それからIsn't AnythingLovelessもやることにして...もし(EPを)リマスターするんだったら全部リマスターするべきだぞって。2002年になって、その作業に取り掛かろうと思ったんだけど、テープを所持していたスタジオ、Metropolis Studioがそれを無くしちゃったんだ。アナログのマルチトラックは一年間ずっと行方不明だった。それでスコットランド・ヤード(ロンドン警視庁)にも協力してもらえ!と僕が脅し始めたら、突然魔法のようにテープが現れたんだよね。この話の真実はまだはっきりと分かったわけじゃないけど、近い将来に決着を付ける予定だよ。

気づけば2003年。次はSonyが急にいろんな理由をつけて契約違反を始めて、それを解決するのに去年まで時間がかかったんだ。その最中、2006年に僕はとにかく作業を始めて、2007年にそれを完成させた。ネット上にある(リークした)のはそれだよ。もうちょっとで完成ってところだったんだけど。そしたらSonyがまた悪態ついてきて...多くの反社会的な会社がそうなんだけど、黙っちゃいられないんだろうね...それでまた公平な状況に差し戻すまでに再調整しなくてはならなくて、だから今やっとのリリースなんだよ。

Pitchfork:2002年にSonyが故意にテープを隠していたというんですか?

Kevin: ああそうさ。僕らが2001年に結んだ契約では僕にテープの所有権を与えていたんだ。そしたらその契約を結んだ時のSonyの運営チームが辞めてしまった。そして新しい運営チームが入ったとき、テープが消えた。これは大いに関係あることなんだ。なぜならたとえ僕が所有者だったとしても、オリジナルのテープからリマスターしないと僕に所有権が返ってこないという契約だったから。もし音源が消えてしまったらリマスターは不可能。よって僕は絶対に音源を所有することができなかった。

[Sonyに上のケヴィンのコメントに対する返答を尋ねたところ、彼らは次のように答えた:「この非常にアイコニックなリイシュー・シリーズをKevinと本当に楽しみながら作りました。リリースが待ちきれません」]



Pitchfork:この作品に対する所有権の考えというのはあなたにとって重要なものだったのですか?

Kevin: オーナーシップとコントロールは大事なものだ。もし自分のやったことを所有できなければ、それをめぐっていろんな下らないことが引き起こされる。ゴミに人々はお金を費やすことになる。たとえばアメリカではWarner BrosがLovelessIsn't Anythingのライセンスを供与したんだけど、彼らは単にCDから音をリップして、それを(2003年に)ヴァイナル化したんだ。まったくひどい仕事だよ。僕の許可なしにそれが行われたし、音のクオリティも100%間違っていた。購入者全員からお金を剥ぎとったんだ。それが店頭に出るまで僕もそのことは全く聞かされてなかった。実際に当時はUKへの輸入禁止命令を出させた。厳密に言えばそれはブートレグと一緒だったから。でもアメリカではWarner Brosは彼ら独自の法の下で動いていたから、アメリカではまあそんなのも法的だったのかもしれない。(※ここはケヴィンの皮肉だと思います。実際の法とか関係なく。)

あと、所有権がないとお金も入ってこないんだ。実際にアメリカからは僕らが作ったすべての作品に対する売上は1ペニーとも入ってきてない。レコード会社の世界では、僕らは常に借金を抱えている。でもこの話の奇妙なところは、Lovelessは最初の一年の売上だけで借金を返すくらいのコピーを売上げたんだ。でも、この先何百枚も何千枚もレコードが出たとしても、Warnerは「僕らは未だに借金状態」っていう状況を何とかして作り上げた。だからWarner Brothersからはコンピレーションは発売されない。彼らも(Sonyと)同じように酷い契約違反をしているから。

[この記事のプレス時に、Warner Brothersから公式の声明は出なかった]

 
Pitchfork:どうもレーベルの問題をめぐってひどい戦いをしてきたみたいですね。

Kevin:僕は被害者なんかじゃないよ。誰ににとってもそういうものなんだ。これは戦地の真ん中で腕を撃たれて「なんで僕なんだ」って言う感じにちょっと似てる。つまり、むちゃくちゃシンプルに言えば「企業システムは全く気違いで、クリエイティブな人間がこういう会社とビジネスの世界に入ることになったら、生涯に渡って問題に直面する」。前に進むにつれて対処していくしかない。人々が組織を再び作りなおすまでこれは止まることはない。

Pitchfork: SonyやWarnerが気違いな存在というのは正確に言えばつまりどういう意味なんですか?

Kevin: まあ、組織っていうのが(気違いなんだ)。でも個人レベルでいえば70%はまともな人間なんだろうけど。でも支配力をもった重要クラスの少数は感情移入なんかしない。知ったこっちゃないのさ。もし君のお願いを聞く以外の決定権が無いところにまで彼らを追い込んだら、そしたらその時ついに何か言い始めるだろう。でもそれまでにひどく時間はかかる。これはゲームなんだ。普通だったら「私被害者だし」と言って時間をかけることを辞めてしまう。 僕に「遅い」とか「時間かけすぎ」という評価が与えられたのも、僕がとにかく(戦いを)止めないからなんだ。行く先には強大な障害があった--音源もない、ロイヤリティもない、企業なんかとんでもない。それを全部解決したんだ。

Pitchfork:つまりリイシューの遅延はあなたの手の負えないところにあったと?

Kevin:非常に低基準な全作品のリマスターの何年も前にやろうと思えばできたって言う点で手に負えなかった。オリジナルの音源を使わなければできたんだ。多くの人がそうするように、CDをコンピューターにいれて、ボリュームを大きめに設定して、違うEQを設定して「ほらリマスターですよ」って言えばよかったんだから。信じられないかもしれないけど、びっくりするくらい多くのリマスターはそうやって作られるんだ。わかっているアーティストはちゃんとした方法でやるけれど、60年代~70年代の商業的なバックカタログはオリジナルの音源から(のリマスター)じゃない。クレイジーだよ。

Pitchfork:ファンはLovelssのもともとの形を崇拝しているのに、そもそもなぜリマスターをしたいと思ったのですか?

KS:リマスターに価値があるテクニカルな理由は、90年代後期まで「ゼロ」と呼ばれる(デバイスの)限界があって、ゼロ以上に大きい音を出すことはできなかったんだ。Lovelessには非常に広いダイナミック・レンジがあって、全体のミックスに圧縮は無かったんだ。それが理由でとても静かな作品になってしまった。最近のレコードはほとんどゼロから6~7デシベル以上なのに対し、Lovelssのほとんどはゼロからマイナス4~5デシベル。そこにすごく大きなボリュームの違いがあるんだ。3デシベル単位で二倍の大きさと把握されるのだから。でもLovelssをラウドにしたかったらボリュームをあげればいいし、そこはそんなに重要なポイントじゃない。大事なのは、CDプレイヤーにあるプロセッサとほとんどのデジタル再生装置は、3デシベル以上から最高の動きをはじめるということ。CDプレイヤーはそのレベル以下はあんまり重要じゃないと見なすから、濃密に処理してくれないんだ。

今回発売される2枚のLovelessリイシューだけど、一枚はオリジナルと全く一緒。だけど全てがデジタル・リミットで剃ることなく(一定の音量で制限 することなく)ゼロまで引き上げられている。原則的に言えば、リミッターは情報をすべて取り出して、人が無意識的にしか普通は聞き取ることができない「トランジエント(過度電流)」と呼ばれる尖った部分を削りとるんだ。この削りとられた部分がリスナーに音楽とつながっている感覚を与える。だから(リミッ ターがかかった状態で)何かを10デシベル以上に設定しても、どういうわけか物足りない。削り取られたそれぞれのピーク部分には代わりにちょっぴり(オリジナルの音ではない)歪みがかかるから、全体のサウンドにハードで不愉快な感じのツヤを与えるのだけど、(リミッターがないから)それも聞こえなくなって いる。Lovelessリイシューの一曲にはちょっぴりデジタル・リミットがかけられているんだけど、それは残りの曲との整合性をとるための「生贄」だっ たから、どの曲かは教えない。あと、サウンドがゼロにまで引き戻されたということは、つまりCDプレイヤーがちょっぴりベターに処理できるようになったと いうこと。だからかなり...ベターに聞こえ...いや、ベターは正確な単語じゃないな。違う感じがするんだ。

Pitchfork: アナログ音源のリマスターをリリースしようと考えた背景は何ですか?

Kevin:オリジナルのLovelssはデジタルのマスターから生まれたものだった。僕が頭に描いていた形とかなり近かったし、その時はアナログテープの方は少し歪んでいたから。テープに移す作業がステレオの音像を広げてしまって、トップとボトムがうるさくなりすぎた。だからギターの配置も正しくなかったんだ。それが気に食わなくて、オリジナルのハーフインチテープは(マスターに)使わないことにした。でも今回は、オリジナルのアナログテープを使って気に食わなかったところを全部修正する機会を手に入れたから、アナログの良い所だけを本質的に残して、嫌なところは取り除いたんだ。

この2つのリマスターを聞き比べても、違いがわからない人は出てくるだろうね。でも、ちょっと腰を据えて最初から終わりまで聴いたら、誰だって他の一枚と比べて全く違った感覚を得ることをがお約束するよ。2枚ともそれぞれ違った理由でいい作品だから。デジタルリマスターは脳内トリップみたいで、アナログのほうはもっとフィジカル。誰か手がけたということを意識するみたいな。

Pitchfork:何年か前の再結成ライブのことを考慮すると---周知の通りかなりラウドでした----、Lovelessのオリジナル音源が一番「静か」だったというのは皮肉ですね。

Kevin:何が言いたいかわかるよ。僕らは最大限も最低限も両方カバーしてるんだ。妥協をせずに、一定のルールで物事を行い、それに対し良い気分になる。そこから生まれているんだ。 


原文:Interviews: Kevin Shields


Special thanks to: Dan, Bob, Nichola for your help, and OTOAN for your inspiration.
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